Forest総括

Forestレビュー。めちゃめちゃ紹介しづらい作品ではあるんですが、思いついたままつらつら書いてみる。

演出萌えは買え。これは既に書いたし、書きやすいんでいろんなところで書かれていることですが、声を非常に有効活用しています。従来のエロゲでは、画面に表示されてる文字列のうちカギ括弧でくくられてる部分が声としても出力されている、というオマケ感が強かったわけですが、本作では表示されてる文字と出力されてる音声がパラレルに創られています。一人称の音声が二人称文字列に直してあったり、台詞は音声のみで文章はその返答のみであったり、画面表示は全くなしで音声のみの進行であったり、多様な効果がマンネリ化せずに使われています。また、その音声もプレイヤーに提示するために用いられているので非常に演劇的。時には歌のように、時には洗脳のように語りかけられます。これは非常に効果的でした。

「物語」好きは買え。ストーリーは説明しづらいです。モチーフとして用いられているのは、不思議の国のアリス鏡の国のアリス・十五少年漂流記・真夏の夜の夢・ピータパン・ナルニア国物語・CATS・指輪物語・神仙女王・宝島・ガリバー旅行記蝿の王クマのプーさんジュマンジ・ウォーターシップダウンのうさぎたち・ゲド戦記・ロビンソンクルーソー・ソロモンの指輪・メアリーポピンズ・ながくつしたのピッピ、等(ネタバレスレより)。もちろんモチーフなのでその通りに話がすすむこともあればミスディレクションとして使われたりもしたりします。それら物語を背景にしつつ、新たな物語を紡ぎ出そう、というのがForest。「訳分かんね」と投げる人もいるとは思いますが、作者のエゴも含めて物語。読者のエゴも含めて物語。

実写背景好きは買え。背景は実写取り込みの合成+エフェクト。単純にエフェクトかけてるだけではなくて、風景の一部だけに森を合成することで、Forestという物語に浸食されつつある異常な世界をよく表していると思いました。

NoBrand Sounds好きは買え。一部他の素材からの音楽もあったりしますが、音楽クオリティは相変わらずのものがあります。今回題材が題材なだけあってケルト系な曲風なものが多いわけですが、哀愁漂ってて曲聞いてるだけでなんか泣きそうになったりしました。

まぁ、勿論イマイチなところもあるわけで、オートモードがない、というのがその筆頭ですかね。普段は音声なんか最後まで聞かない人なんでオートモードに何のメリットがあるやら分かってなかったんですが、音声を最後まで聞く必要があるこのゲームではクリックのタイミングが掴みづらくてなかなか大変でした。

あと、CG枚数が少ないとかいわれてますが、枚数よりもバランス悪いのが問題じゃないかなぁとか思ったり。ほぼ完全にエロシーンにしかCGがないのはいかがなものかと。むしろこの作品の場合絵のないエロシーンがあっても良かったのではないかと。

以上つらつら書いてきましたが、とにもかくにも強烈に個性的な作品でした。ヘンな作品をやりたい人はやれ、ということで。お話メディアとしてのエロゲのひとつの新たな形でしょう。

でも合わない人には徹底的に合わない予感。クレームはライアーソフトまで(ぉ 「これはこれで、また別のお話」